ジャズ名盤探索記#1 Herbie Hancock – Maiden Voyage

名盤名曲
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今日からジャズ名盤探索記と題しまして、ジャズファン歴30年のヤキマクが名盤・名曲の解説をして、ジャズの魅力について発信します。

あくまでもジャズファンが趣味で書いたライナーノートということで、個人的な感想、これまでにジャズ関連の書籍で得た知識(雑学)、ジャズを演奏する側(ジャズサックスを勉強中)の観点などを織り交ぜながら、紹介しようと思っています。

年々サブスクで音楽を聴く人が増えていることから、CDに付属しているライナーノートを見ながら聴く機会は減ってきているのではないでしょうか。

そんな時代が変化する中で、この私の個人的なブログがライナーノートの代わりとなって、読者の方々のジャズライフに役立つことがあればと思っています。

本企画の記念すべき第一弾は、ハービーハンコック(Herbie Hancock)の処女航海(Maiden Voyage)です。

この新企画の船出に相応しいタイトルということで、この曲を選曲しました。

Maiden Voyage (処女航海)

まずYoutubeの音源を埋め込んでおきます。どうぞ再生しながらお読みください。

アルバム情報は、次のようになります。Youtubeのリンク再生はタイトル曲の「Maiden Voyage」のみにしています。

トラックリスト

1Maiden Voyage
2The Eye Of The Hurricane
3Little One
4Survival Of The Fittest
5Dolphin Dance

アーティスト

Freddie Hubbardtrumpet
George Colemantenor sax
Herbie Hancockpiano
Ron Carterbass
Tony Williamsdrums

1965年5月17日、ハービーハンコックが25歳の時に録音されたハービーハンコックの代表曲で、モダンジャズ(1940年代後半から1960年代後半のジャズの総称)後期の代表曲

私の手元にある「スイングジャーナル臨時増刊 20世紀ジャズ名曲大辞典(2001年5月)」では、次のように表現されています。

60年代のジャズがもつ、フレッシュな響きのすべてが織り込まれている。まさに新時代をリードしてゆくハービー・ハンコックが放った、記念碑的名曲である。

スイングジャーナル臨時増刊 20世紀ジャズ名曲大辞典(2001年5月)より

このアルバムは、いま引用したスイングジャーナルというジャズ専門の月刊誌が認定したゴールドディスクという扱いとなっています。

ジャズを聴き始めたのは1990年頃、このスイングジャーナル誌の記事とジャズ喫茶で実際に聴いたアルバムを頼りにCDを購入していました。そのCDの選択するときに、「ゴールドディスクであれば、まあハズレはないだろう…」という安心感があった記憶があります。

変な癖がなく、万人受けする。演奏の完成度が高い。そんなイメージがありました。

現在は、Youtubeでほとんどの有名曲が視聴できるため、そんな心配はなくなったので、「ハズレ(好みに合わない)」のアルバムを購入するといった、あのスリルを味わうことはないとだと思います。

このアルバムは、全曲ハービーハンコックが作曲したオリジナルで、航海のイメージしたストーリー性のある作品になっています。

Maiden Voyage以外にDolphin Danceもジャズスタンダードとして人気があり、ハービーハンコックの代表曲の一つとなっています。

モードジャズ

次にジャズのスタイルについて書きます。

この曲は、数多くあるジャズのスタイルを分類する言葉で表現すると、モードジャズ(モーダルジャズ)に分類され、AABA形式の32小節で4小節毎にモード(旋法)が切り替わる構成となっています。

モードジャズの代表曲であるso what(Miles Davis)やimpressions(John Coltrane)などは、8小節や16小節でモード切り替わるのに対して、この曲は4小節毎にモードが切り替わるので、少し動きが早い進行感もあるモードジャズと言えると思います。

モードジャズはモード(旋法)を用いてアドリブ演奏がされますが、モード以前の1940年代から1950年代にかけて進化してきたジャズのスタイルである、ビバップ(bebop)やハードバップ(hardbop)ではコード(和音)進行に沿ってアドリブが行われます。

次に、参考にiRealPro(伴奏用アプリ)で作成したコード進行を貼り付けます。モードの曲なので、モード進行といった方が良いのかもしれないですね。

Aの8小節は、リピートして2回繰り返していて、A(8小節)+A(8小節)+B(8小節)+A(8小節)の合計32小節のテーマになっていて、4種類のモードが、4小節毎に変化する流れになっています。

もしよろしければ、テーマ部分(0:15~1:20辺り)だけでも良いので、上のコード譜(モード譜?)を見ながら、どこを演奏しているのか、追ってみることにチャレンジして見てください。

「B」の部分で、曲の盛り上がり、緊張感が増す様子が確認できましたでしょうか?

このようにジャズを演奏する側に少し近づいた感じで、積極的に聴くことも面白いのではないかと思って、紹介していました。

ドラムのリズムが少し難解で、表拍の音を抜いて裏拍を強調するシンコペーションしているので、拍子が取りにくいかもしれないですね。

当時バンドでドラム叩いていた私は、当然ドラムを中心に聴いていたのですが、このトニーウィリアムスのドラミングは、本当に格好良いと思った記憶があります。

ジョージコールマンのアドリブソロは、32小節の1コーラスでしたが、フレディーハバードのアドリブソロは32小節×2の2コーラスになっています。(上の譜面を見ながら、聴いてみるという楽しみ方もあります)

あと、このフレディーハバード(trumpet)のソロが非常にダイナミックで熱い演奏をしており、凄みを感じる名演だと思っています。

いろいろ専門用語など意味が分からない、興味ないと思った人は、その部分は読み飛ばしてもらってOKで、ジャズは好きな聴き方で楽しんでください。

個人的にもう少し探求したくなったので、Maiden Voyageをアナライズする譜面を作ってみました。

各コードの部分の調性(キー)と使用するモード(≒音階)を記載して、同じ部分を同じ色で囲った形です。

7thコードに対してミクソリディアン(ソから始める音階)で一旦書いていますが、恐らくドリアン(レから始める音階)の方が考えやすいため、ドリアンを書いています。

C#-6(C#m6)の部分は、逆にドリアンから考えて、ミクソリディアンを導いて記載しています。

こうやって並べてドリアンで比較してみると、Aパートのスケールを半音上げるとBパートのスケールになることが分かります。(Aの半音上=B♭,Cの半音上=C#)

補足ですが、上の譜面は、ミクソリディアン、ドリアンの順で演奏する必要があると言っている訳ではなく、便宜上で並べているだけなので、この並びは気にしないでください。

Bパートがサビの部分になりますが、サビで半音上に転調して盛り上がった後、元に戻ってくるという流れの曲になっていると解釈できそうです。

4つのキー(調性)で4小節毎に転調する曲のため、私のようなジャズ初学者には、手が出ない難しい曲に感じます。

私は、過去のレッスンでMilestones(マイルスデイビスのモードの曲)などチャレンジしましたが、迷走して撃沈しましたので、まだまだ修行が必要と思っています。

この曲は、私が初めてジャムセッションに参加した時に、凄腕のテナーサックスの方が私の初セッションのお祝いの意味を込めて演奏してくださった、思い出の曲だったりします。

参加アーティスト

ハービーハンコックは、ジャズ界の重鎮であるマイルスデイビスのバンドに1963年5月から参加していたのですが、本アルバムの参加アーティストは、フレディーハバードを除いてマイルスデイビスのバンドメンバーとなっています。

マイルスデイビスというジャズ界のボスのバンドメンバーとして起用されていた、新しい感覚を持った若手のホープ達が、ハービーハンコックのアルバムレコーディングのために集まり、ボス不在の解放感のある状態でレコーディングされたのではないかと、私は想像します。

マイルスデイビスのバンドメンバーに起用される若手とは、どんな位置づけなのか?

お笑いでいうと、M1の決勝戦進出、、いやM1で優勝するくらいの勢いのあった人と思ってもらえばよいかと思います。

このアルバムの録音当時の年齢は、次のようになります。

  • フレディーハバード(Tp) 27歳
  • ジョージコールマン(Ts) 30歳
  • ハービーハンコック(P) 25歳
  • ロンカーター(B) 28歳
  • トニーウィリアムス(Ds) 19歳

その他、雑学

どうでもよい話かもしれないのですが、Maiden Voyage(処女航海)は、男性化粧品のCM用に作曲されたそうです。こんな雑学、役に立つことはないと思いますが、知っていることは書いておきます。

もっとどうでもよい話なのですが、ハービーハンコックは、このような方なのですが、鈴木雅之さんに似ていると思うのは、私だけでしょうか? (黒いサングラスに入れ替えると、きっと)

引用元
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:HERBIE_HANCOCK_1999.jpg
ライセンス:CC BY-SA 2.0
Herbie Hancock @ TED 2009

そういえば、最近すごく宣伝しているデアゴスティーニ(DeAGOSTINI)のBLUE NOTEコレクションの第二弾は、ちょうどハービーハンコックで、Maiden Voyage(処女航海)が収録されているようです。

第一回のジャズ名盤探索記は、この辺りにしておきます。

かなりの長文なのに、最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました。

実はジャズ初心者に向けて、ジャズの楽しみ方など、まだまだもっと伝えたいことがあるのですが、それは次回以降に少しづつ出していこうと思います。

ジャズの名盤は、音楽のみならず、アルバムジャケットのデザインが素晴らしいものも多く、部屋に飾っている方も多いです。
付属するライナーノートを含めて、CDを所有する価値が十分にあると思います。

もし本物のライナーノートを手にしたいと思った方はこちら。

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コメント

  1. 齋藤容子 より:

    TOTOのカバーで、ハービーの曲と最近知りました。
    この曲を検索しまして「バタフライ」も彼の曲で、加えて笠井紀美子というジャズシンガーの名前も知りました。
    リリースされた年は、わたしはまだ1歳にもならず、60年近く経っていろいろわかり、それでもモロジャズは避けて通っていますので、お子ちゃまだなと思います。
    あまりにプレイが際立って、タイトルが聴き取れないナンバーがあるせいでしょうか。
    ビッグバンドジャズは好んで聴きます。グレン・ミラーとかガイ・ランバートです。
    楽しく読ませていただきました。ありがとうございます♪

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