ジャズファン歴30年のヤキマクです。ジャズ初心者にジャズの楽しさや魅力を伝えたいと思って発信しています。
個人的なライナーノートとして作成していますが、参考になれば幸いです。
今回のジャズ名盤探索記の第2弾は、Art Pepper Meets The Rhythm Sectionです。
Art Pepper Meets The Rhythm Section
このアルバムは、1957年1月19日にアートペッパーが31歳の時に録音された彼の代表作です。
スイングジャーナル誌(2001年1月)の「読者が選ぶジャズ名盤ベスト100」の中で4位ということから、多くのジャズファンに愛されたアルバムであることが分かると思います。
ちなみに、第一回で紹介したハービーハンコックのMaiden Voyage(処女航海)は、17位だったようです。
演奏しているのは、次のアーチストたちです。
Art Pepper | alto sax |
Red Garland | piano |
Paul Chambers | bass |
Philly Joe Jones | drums |
アートペッパーは、西海岸(ウエストコースト)、ロサンゼルスを拠点に活動していたようですが、本アルバムのリズムセクション、レッドガーランド(p)、ポールチェンバース(b)、フィリージョージョーンズ(ds)の3人は、東海岸(イーストコースト)、ニューヨークで活動していたアーチストです。
このリズムセクションの3人は、当時マイルスデイビスのバンドのリズムセクションをしていました。
第一回(Maiden Voyage)と何か関連があるアルバムを選ぼうと考えまして、マイルスデイビスのリズムセクション繋がりということで、今回のArt Pepper Meets The Rhythm Sectionは、選曲をしています。
想像ではあるのですが、当時の状況では、西海岸と東海岸のアーチスト達が一緒にコラボする機会はそれほどなかったのではないかと思います。
西海岸(ウエストコースト)の売れっ子サックス奏者と、東海岸(イーストコースト)のNo1リズムセクションでコラボすれば、売れるのではないか、そんな企画だったのでは、、、と推測ではありますが、思っています。
英語版のwikipediaに当時の経緯が書いてありました
ペッパーによると、スタジオで予定されていた朝に最初にレコーディングセッションを知ったので、アルバムは大きなプレッシャーの下でレコーディングされました。
From Wikipedia, the free encyclopedia
彼は修理の状態が悪い楽器で演奏していて、薬物問題に苦しんでいました。
当日の朝、このレコーディングを知って、しかも面識の内、東海岸(イーストコースト)のトップアーチストとセッションだったので、結構なプレッシャーだったのだと想像します。
ちなみに、この当時アートペッパーが使用していた楽器(アルトサックス)は、Martin(マーチン)のCommittee lllという楽器だったそうです。
そのMartinの状態は悪かったとアートペッパー本人は言っていますが、そんなことを感じさせない名演を聴かせてくれています。
アートペッパーは、1940年代から薬物中毒者となり、幾度となく懲役刑によってキャリアを中断しているのですが、1956年~1957年は、特に多くのレコーディングを行っているようです。
このArt Pepper Meets The Rhythm Sectionの直前にModern Artの録音がされていて、こちらも代表作の一つとなっています。
いつものウエストコースのリズムセクションと録音したこの作品と比較してみても良いかと思います。
では、アルバム収録曲のリストです。
1 | You’d Be So Nice To Come Home To |
2 | Red Pepper Blues |
3 | Imagination |
4 | Waltz Me Blues |
5 | Straight Life |
6 | Jazz Me Blues |
7 | Tin Tin Deo |
8 | Star Eyes |
9 | Birks Works |
10 | The Man I Love |
この中で、1曲目の「You’d be so nice come home to」について、もう少し詳しく説明していきます。
You’d be so nice come home to
You’d be so nice come home toは、ジャズスタンダードナンバーとして、現在も多くのアーチストによって演奏されている曲の一つです。
私の面識のあるプロのサックス奏者(バークリー音楽大学出身)の方が2名ほどおられるのですが、アドバイスいただく際に、お二人ともに「スタンダードは原曲を聴いた方が良い」と言われます。
原曲をちゃんと理解して、そこから自分なりのアレンジをして演奏した方が良いというアドバイスだと思います。
私は、まだまだそれを実践できるようなレベルにはないですが、まずは聴くことからだと思ったので、
この曲のオリジナルについて、調べてみました。ウィキペディアによりますと、
コール・ポーター作曲で、1942年に発表された映画 “Something to shout about” の挿入歌である[1]。映画ではジャネット・ブレアとドン・アメチーが歌った。戦場に送られた青年が、愛する女性を思う気持ちを歌い上げたナンバーである。レコードでは、ダイナ・ショアの録音が1943年のヒットチャートに入った。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒットしたダイナ・ショアの当時のレコードが原曲と理解すればよいと思ったので、最後にyoutubeを貼り付けておきます。私もこれで勉強します!
このYou’d be so nice come home toは、アドリブを比較的簡単にやれる方法がありそうです。通常演奏されるGm(Gマイナー)であれば、Gマイナーペンタトニック(B♭メジャーペンタトニック)一発でできそうです。
使える音としては、「ソ、シ♭、ド、レ、ミ」の5音で、ド#(ブルーノート)を加えることでブルージーになります。
私は、サックスの音の出せない時間帯に、よく伴奏ソフト(iRealProなど)を鳴らしながら、ギターやキーボードを単音(技術的に和音まで出来ないの)でアドリブ(のような遊びを)しているのですが、上の音使いで大きく外れる感じはないですね。
この曲の歌詞の意味としては、「あなたがいる所へ帰れたらいいのに」というイメージっぽいです。英語はあまり得意じゃないし、細かいニュアンスまで分からないですが、歌詞の和訳サイトなど見ているとそのような解釈が紹介されています。
この曲のコード進行としては、終始マイナー調で進むこの曲ですが、最後はB♭メジャーで解決するので、「あなたがいる所へ帰れたらいいのに」という切ない想いが、最後にはメジャーコードで解決して叶うのでしょうか。勝手な解釈ですが、そんなことを想像していました。
このYou’d be so nice come home toを楽器で演奏したジャズアルバムの代表作は、今回紹介しているArt Pepper Meets The Rhythm Sectionですが、ボーカル作品ではヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウンが有名です。
確か日本では、昔CMで使用されていたことがあったはずです。
このバージョンも大好きなので、今後紹介したいと思っています。クリフォードブラウンのトランペットがめちゃくちゃ格好良いで、ご存じない方は是非聴いてみることをお勧めします。
このブログを書きながら久しぶりにこの曲を聴きましたが、間奏のクリフォードブラウンのソロには、改めて感動しました。キラキラと輝かしい音色と心揺さぶる絶妙な歌い方が本当に素晴らしいです。
最後に冒頭で書きました。この曲の原曲、1942年のダイナショアの歌も参考に貼り付けておきます。
ジャズの名盤は、音楽のみならず、アルバムジャケットのデザインが素晴らしいものも多く、部屋に飾っている方も多いです。
付属するライナーノートを含めて、CDを所有する価値が十分にあると思います。
もし本物のライナーノートを手にしたいと思った方はこちら。
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